フォンダンショコラな恋人
「あ、限定イチゴミルク酎ハイだ」
「甘そうだな」

そう言って倉橋はひょい、と翠咲の手から缶酎ハイを取り上げてカゴに入れてしまう。

「翠咲は朝はパン派? ご飯派?」
「いえ。こだわりはないかな」
「パンで良ければ家に美味いのがあるから、明日の朝はそれにするか」

えーと、泊まるとか言ってないんですけど……。
翠咲は声には出していないけれど、顔に出ていたのかもしれない。

「帰すわけないだろ?」
首を傾げて、ふっと笑われて翠咲はまたどきん、と鼓動が跳ねる。

もう!本当に心臓に悪い、この人!
さっきから、ずっといろんなことで翠咲はドキドキしっぱなしなのだ。

「翠咲、会計するから、外で待ってて」
「うん」
翠咲が外に出ると、目の前は小さな公園だった。

夏の夜は、夜になっても昼間の熱気を残している。
公園には申し訳程度の遊具があって、月のあかりがその遊具を照らしていた。

都心から4駅しか離れていないけれども、閑静な場所だ。
そんな風景を見ていたら、翠咲の心も少しだけ静まる。
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