フォンダンショコラな恋人
それでも抑えきれない高揚のようなドキドキした気持ちはまだ残っていた。

好きな人ができた。

その気持ちは嬉しくてドキドキして、ふわふわと心もとないような、浮き上がるような気持ちになる。
一緒に何かをしたい、という倉橋の気持ちは翠咲にもよく分かった。

こうしてみたら、一緒に書類を整理したことだって。
今日のように一緒に花火を見たことだって、思い出になっていく。

──ちゃんと本気なんだ……。

倉橋は頭の良い人だ。
だからこそ、翠咲が自分の気持ちに気づいても、自分から動けないことなど、とっくに察しているだろう。

実際、あれくらいに強引にされなければ、翠咲はきっと誰かとお付き合いすることなどなかった。

『まかせなさい』
思えば、あの言葉がきっかけだったのだ。

それまでは冷酷で、淡々としていて、表情がなくて証拠証拠って……と思っていたけれど。

この人に任せれば、大丈夫。
そう思った。
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