フォンダンショコラな恋人
倉橋がクスッと笑う。
「前も言っていたな、それ」

「表面は固くて、苦くて、……でも、中は熱くて甘い。冷たいのが似合って……。分かりにくいことが、いいとか悪いとかじゃなくて、私、フォンダンショコラは好きだな」

「翠咲、陽平、な」
「陽平さん……ごめんね言い慣れなくて」

ふにゃっ……と翠咲が笑顔を返すのに、笑った倉橋は翠咲の唇に自分のそれを重ね合わせて、柔らかく何度もキスをする。

ゆるりと舌が口の中をかき回して、翠咲はその感触に酔いそうだ。
「ん……」
くらりとして、翠咲は倉橋に掴まった。
倉橋がぎゅっと翠咲の身体を抱きしめる。

「やっぱり、甘いな」
「いちごミルク?」
「それもだけど……翠咲もだよ」

倉橋の綺麗な指先が、翠咲の手に持っていた缶をそっと取りあげて、リビングテーブルの上に置いた。

そうして、髪を上げている翠咲の首元を指ですうっと撫でる。

汗をかいた冷たい缶に触れた手で撫でるから、少しひんやりして、翠咲は首をすくめた。

腕の中の翠咲を見つめる倉橋の顔は、どこまでも甘い。
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