フォンダンショコラな恋人
12.嵐がやってくる
「来ますね」
「来るな、これは」
数日前から日本列島を横断するような進路を示していた台風は、どうやら大型で強い勢力となり直撃するようだ。

暴風雨に警戒が必要だと気象庁のサイトで確認をしていた課長の沢村が打合せのため、席を立った。
おそらくは、直撃。

地域によってはある程度の被害が見込まれるような規模が予想されていた。
もちろん、翠咲達の傷害課でも警戒は必要だ。
避難の時に転倒をするようなケガを負うこともある。

けれどそれよりも翠咲が以前在籍していた火災新種課は屋根が飛んだとか、カーポートが壊れた等の家屋の被害事故が一気に発生するのだ。

こんな時は翠咲達のような保険会社では、対策室を早期から立ち上げて直撃前から対応に備える。

なにもなく台風の進路は逸れることもあるので、そんな時はよかったねーと平和に解散するのだが、今回の台風の進路はそうではない可能性が非常に高かった。

通常時の何倍もの業務量が一気に発生する自然災害は、担当課だけで捌くことは不可能だ。

受付をするのは翠咲の後輩で、気づかいもよく出来る高槻結衣のいるコールセンターである。

おそらくはコールセンターでも、対策を取るはずだ。
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