フォンダンショコラな恋人
『うん、そっちは?』
「私も今終わった」

『で、昼間の話なんだけど、付き合ってんの?』
なぜそんなことを何度も確認したがるのだろう。

「なんで?隼人に関係ある?」
『あるよ。だから言ったじゃん、お前を最近いいなって思うことが多いんだよ』

そんな気配は見えなかったような気がするのだが。
「そんなこと、なかったでしょう?」

翠咲は疲れていたので、会社前からタクシーに乗って帰ることにする。
通話をしたままで、タクシーに手を挙げた。
運転手に行き先を告げて、通話に戻る。

「ごめん、今帰り道だから」
『心配だから、家に帰るまで通話する』

北条のこういうところはとてもいいところだと思う。
同期の研修の時も彼の機転に助けられたことが何回かあった。

「ありがとう」
受話器からは軽いため息の音が漏れてきた。
『お前、本当にそうやって、誰にでも優しいの、どうかと思うよ?』

自分ではそうは思わない。
割り切ったり、距離を作ったりすることもあるからだ。
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