フォンダンショコラな恋人
損保会社も金融機関と呼ばれる企業である。
特に北条はその本社での法人担当なのだし、普通に考えれば、それなりのエリートなのだ。

電話の向こうが一瞬しん、としたあと、低い北条の声が受話器から漏れてきた。

『翠咲のそういうところが頼り甲斐があるというか、怖いというか。お前のリスク管理は本当に恐れ入る。だから、あんな弁護士と気が合うんだな』
「そうね」

話しながら会計を済ませ、外に出る。

マンションに向かって歩きながら、ふと、翠咲は背後からの足音に気づいた。

「隼人……なんか、怖いかも……」
『ん?どうした?』

「誰か後ろにいるかも知れない……」
『通報する。今どこだ?』
翠咲の言葉に北条の声が緊迫感を帯びる。

「新陽町のコンビニを出たところ」
『通話、絶対切るなよ』

翠咲は後ろの人の気配を感じて、歩くスピードを早めたり遅くしたりしてみた。

後ろの人物はそれにも合わせてついてくる。
間違いなくつけられていると感じた。

時間も遅いせいか、歩いている人も少ない。怖くて、翠咲は心臓が大きく音を立て、どくどくという音が耳元でするのを感じた。
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