フォンダンショコラな恋人
「どうしよう……すごく怖い」
『今通報してる。大丈夫だから翠咲』
電話の向こうで繋がったらしき警察と北条の話し声がする。

もうすぐマンションだ。
気づいたら、早足になっていることに翠咲は気づいた。
それでも後ろから足音はついてくる。

怖い……!!
ちょうどその時にマンションの前にタクシーが止まった。中から出てきたのは陽平だった。
「翠咲……?」

「陽平さんっ!」
翠咲は陽平に駆け寄った。

尋常ではない翠咲の様子を察して、陽平は翠咲の背後に目をやる。

「彼女に何か用か?」
背後に翠咲を庇って後ろの人物に陽平は声をかける。

「……っ!この女が!金を払わないから……!!」
「お前……、沢口か」

沢口、それは以前に翠咲を訴えた男の名前だった。

翠咲は電話でしか対応していないので、その姿を知らないけれど、陽平は裁判でその姿を見ている。

あいかわらずチャラチャラとした姿だったけれど、その目だけがやけにぎらついていた。
「お前……あの時の弁護士か?!」
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