フォンダンショコラな恋人
2.ボタンを掛け違うとズレる。
皆さんは弁護士にどういうイメージをお持ちだろうか。

頭が良い?お金持ち?
法廷に立って『異議あり!』とか叫んでいる姿だろうか。

あれはないなー……心の中で倉橋陽平(くらはしようへい)はそんなことを考えつつ、顧問先の保険会社への道をてくてく歩いていた。

やってみたい気もするが、そもそも裁判官の許可もなく、そんな発言をしたら法廷を摘み出されること請合いだし、後々までの語り草となるだろう。

だから自分はやりたくないのだが、見てみたい。
誰かやってくんねーかな。
そんな不謹慎なことを考える。

倉橋陽平(くらはしようへい)はいわゆるイソ弁という立場だ。
事務所に雇われて勤務する弁護士の呼び方である。

実はこの呼び方も、陽平自身は気に入らない。
きちんと報酬ももらって勤務しているのに、居候はおかしいだろうと思うのだ。

海外ではパートナー弁護士というものもあるらしいが、それは経営権を持つ弁護士のことだ。
陽平は弁護士になりたいのであって、経営者になりたいわけではない。

そんな話を今のオーナー弁護士としていたところ、小声で『面倒くせ……』と言われた。
聞き逃す陽平ではない。
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