フォンダンショコラな恋人
さほど、仲が良いわけでもなかったと思うのだが、にこにこしながらそんなことを言うので、つい了承してしまったものだ。

なんとなく待ち合わせして、店に行くと、
「ホントに来た!」
と笑顔になった。

いや、呼んでおいてそれはないだろうと思ったら
「頭の良いお前のことだから、察して来ないんじゃないかと思って」
とにこにこしていた。

「飲みたいんじゃないんですか?」
「言葉通りに取ったな」

店に呼ばれたのは、仕事のオファーだったのだ。

「学生の時から飛び抜けて顔が綺麗で、飛び抜けて頭が良かったから、気にはしていたんだ。もう、弁護士として法廷に出ているから、優秀なんだな。大手は大手なりの面白さがあるんだろうが、うちでやる気はないか?」

事務所は小さいけれど、企業と顧問契約をしているから、暇ではないと大きな声で話す。

別に今の事務所に不満はなかったけど、思った感じと違うと感じていたのは否めない。

「小さいことには間違いがないから、なんでも自分でやるんだぞ」

今の事務所では言わば、シニア弁護士の下働きのような感じで、肩書きは弁護士ではあるものの、実際はアシスタントのようなものだなと感じることも多かった。
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