フォンダンショコラな恋人
代理人として出廷するのも主に先輩弁護士で、自分は資料の用意だのなんだのである。
なんでも自分でやる、しかも今までの事務所の経験も役立つ。

このまま飼い殺しにされたり、大手で出世を待つのもどうなんだろうと思っていた矢先だった。

「やります」
「え⁉︎ マジ⁉︎」
自分で声をかけておいて、マジはないだろう。

「本気じゃないんですか? 割とその気になったんですけど」
「お前、面白すぎるんだが。独特だな、そのペース」

それからは、渡真利の事務所で仕事をしている。

小さいけれど暇ではないの通りで、代々弁護士の家系だという『渡真利法律事務所』は大手から、中小から結構企業関連の契約が多く、法廷での係争に至らないまでも専門家である弁護士の見解が必要な事案は多い。

もちろん、それ以外にも法律相談なども受けることがあり、渡真利に言わせると
「正直、倉橋が来てくれなかったら、事務所が回らなかったかもしれない」
とは大袈裟な事でもないのかもしれないと思った。

その中で、大きな顧問先の一つがこの保険会社だった。
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