フォンダンショコラな恋人
けれど頑張ってくれたのは分かるけれどそれでも、無理なことは無理と伝えなくてはならない。

「正直、これでは難しいですね。完全に否定する事は出来ないのでお支払いするしかないのかと」

「そんな……だって明らかじゃないですか⁉︎ これって、詐欺じゃないんですか⁉︎」

気持ちは分からなくもない。
けれど、倉橋には倉橋の仕事がある。

「詐欺と言い切るには証拠が不足している、と言う事です」
「充分に調査しました!」

「これでは、法廷で争えません」
「先生はどちらの味方なんです⁉︎」

「僕はどちらの味方でもありません。こちらから、それなりの顧問料を頂いている。だからこそ、きちんとした仕事をしているだけです。判例や法に照らし合わせて、見解を述べるならば、これでは不十分としか言えないと言うことです」

一瞬、宝条は感情的にもなったように見えたけれど、倉橋のその言葉を聞いて、ふうっと力を抜いた。

「仰る通りです。失礼なことを申し上げて、すみませんでした。出直して参ります」

顧客が感情的になるのはよくあることだ。
倉橋はそれはなんとも思わない。
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