フォンダンショコラな恋人
人を裁くことは、人にしか出来ないことだと理解しているから。
そして、その『人』には感情がある。

それは避けられないし、裁判の場というのはその人にとっては、非日常のことなのだ。
より冷静な判断は出来なくなるものだ。

だからこそ弁護士も裁判官も冷静な判断を求められるし、その時の感情だけでは動けない部分が出てくる。
あくまでも、法に照らし合わせてどうなのかが判断の基準だからだ。

頭を下げた宝条は、資料を抱えて会議室を出て行った。
しかし、倉橋も宝条の仕事だけを受けているわけではない。

気にはなったけれど、簡単に案件の内容を手控えにまとめて会議室を出た。
別の部署でもお呼びがかかっているからだ。

そうしているうちに、気づいたら18時を過ぎていた。
「うわ、先生、遅くまですみません。お時間大丈夫でしたか?」

倉橋も腕時計を見て、初めてそんな時間になっていることを知った。
今日一日は、この会社で予定が埋まるであろうことは覚悟していたので、特に他の予定は入れてはいない。

「他の予定もないですし、大丈夫です」
「良かったです。そういえば、新しい先生ですし、懇親も兼ねてお食事でもどうですか?」
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