フォンダンショコラな恋人
倉橋が見ると、宝条は隣に座っている女性と親しげに話していた。
中々にキュートな雰囲気のその女性と話すのは楽しいようで、時折、あははっと笑い声が聞こえ、笑顔まで見える。

倉橋はなんだ、あんな顔もできるんじゃないかと思った。

いつも倉橋の前にいる宝条は眉間に力が入っていて、唇を結んでいるから。
あんな、笑顔は見た事がない。

まあ、そうか。と思う。
自分のことはおそらく、好意的には思われていないんだな、と思った。

そしていつもなら願ったり叶ったりのはずのその状況がなぜか、今は面白くなく、胸に引っかかったのだ。


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