フォンダンショコラな恋人
「何よ……」
「いや、懐かしくて。自分もよくそーやって、叫んでたなあって思い出したんです。宝条さん、私査定って、保険会社の最後の切り札だと思っています。何かあるならここでしか最終的に食い止めることはできないんです」

「うん」
きっと言われたことに納得したのだろう。
大人しく同意する宝条の声が聞こえた。

書類からも、よく分かった宝条の性格。
真面目で正義感が強いのだ。

「酔いそう。お水、もらってくる」
「一緒にいきましょうか?」
「ん、平気……」

ふわりと宝条が立った気配がしたので、倉橋も席を立った。

大将に水を依頼した宝条は奥の御手洗に向かったようだったので、倉橋はその場に立って待つことにした。

待ってどうするんだろう……。
そんなことも一瞬考える。

何だか分からないけれど、とにかくショックだったり、少し腹立たしい気持ちだったり言い訳したいような……いや、むしろ宝条の見解を聞きたいと思ったのだ。

大将からお水をもらった宝条は、本当にかなり深酔いしているように見えた。

あまり考えたくはないが、それが自分のせいだとしたら、
……せいだとしたら、なんだろう。
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