フォンダンショコラな恋人
そんなことをとりとめなく考えていたら、大将から水をもらった宝条が隣でこくこくと水を飲んでいるのが目の端に映った。

と言うか気付かないものだろうか?

「ありがとう」
そう言ってコップをカウンターに置いた宝条が席に戻ろうとするのに、つい前に立ってしまった。

ん?となった宝条が避ける。
さらに、その前に立つ。

さすがに違和感を感じたのか、宝条が顔を上げた。

「あ、すみませ……」
顔を上げた宝条が、目を大きく開く。

「宝条さん、でした? 僕、そんなに感じ悪いですか?」

あ、これは言っておかなくては。
「ちなみに、吹いたくらいじゃ折れませんから」

どこから聞いてたの?何を聞いてたの?と顔に書いてある。
とても、正直な人だ。

倉橋はそれを読み取ったように、話を続けた。
「別件で別の席にいたんですけど、同席の方がここに知り合いがいると言うので、端の方に紛れさせて頂いていたんですが」

はわはわしている宝条が言葉をなくしたような、何かを言わなければという顔をしている。
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