フォンダンショコラな恋人
そう言うと、高槻と名乗った彼女は、一瞬じいっと倉橋を見る。
倉橋は真っ直ぐ見つめ返した。

話し合いたいことがあるのは本当だ。
打ち合わせかと言われると、厳密には微妙かも知れないが。

高槻は目を伏せた。
ふっと口元に手を持ってくる。
くすっと笑ったようだった。

「分かりました。上司には宝条さんは酔ったので帰ったと言っておきます」

「え⁉︎ 結衣ちゃん! そんな……」
「宝条さん、確かに一度お話し合いをされてもいいんじゃないですか?」

察しのいい後輩で助かった。
高槻はさっさと、宝条のバッグを持ってきて彼女に渡す。

「わだかまりはない方が仕事しやすいですから!」
グッドラック!そう言って、宴席に戻って行った。面白い子だ。

「あの……なんで私が……」
往生際の悪い。

宝条はまだぐずぐず言っていたけれど、外へ連れ出してタクシーに手をあげた。

行きつけのラウンジのあるホテルの名前を告げる。
ホテルの名前を聞いて、一瞬怯えた顔をした宝条は可愛かったけれど淡々と告げた。
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