フォンダンショコラな恋人
「本当に分かりにくい方なんですね」
何が楽しかったのかくすくすと笑って、宝条は大人しく車に揺られていた。

「本当。結衣ちゃんの言うことは正しいわ。ちゃんと話さなきゃですね」
「分かりにくいのは事実ですよ。みんながそう言いますから。僕としては事を難解にしているつもりはないんですが」

「ごめんなさい」
突然謝られて、倉橋は驚いた。
「はい?」

「感じが悪いとか言ってしまってごめんなさい。感情的になってしまっていたかもしれません」
「ああ」

ちょうどタクシーが止まったので、精算をして倉橋は宝条と車を降りる。
「どうして、こんなところに連れてきたんです?」

「君が、僕のことを嫌いだと言うし……それに話をしなければと思って」
「私はあなたが私のことを嫌いなのだと思っていたので」

「そんなこと、いつ言いましたか?」
宝条は少し考える顔だ。

「言ってないですね。でも嫌いだから、態度が悪いんだって思いました。けどそれも私の誤解だって分かりましたし、お詫びもしましたよね」
< 44 / 231 >

この作品をシェア

pagetop