フォンダンショコラな恋人
まあ、これなら連れ込まれちゃいたーいっ!と思う女子がいてもおかしくはない。
しかし、私はそうは思わないからっ。

なのに、なんで、そんな顔でこっち見てるのよ!?

「……なんです?」
そう聞いたら、思いがけず倉橋の表情が少しだけ緩んだのだ。

極、極々軽く!
「いや、冗談です」

その言葉を聞いて、翠咲は内心『ひぇぇぇぇ……⁉︎』とムンクの叫びのようになっていたのだ。

冗談⁉︎
この"キングオブザ感じ悪い"の倉橋弁護士が⁉︎

冗談などと言っていること自体が、冗談ではないのか?
あれ?よく分かんない。

とにかく、翠咲も動揺していた。
そう言えば、割烹では『僕はね、あなたのことを嫌いではないですよ』とか倉橋は言っていた。

「倉橋先生も冗談なんて仰るんですね」
思わず翠咲の口から零れてしまった言葉だ。

「冗談くらいは言いますよ」
少しだけ、憮然として倉橋は翠咲にそう返した。
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