フォンダンショコラな恋人
そうやって返されることに、今までは都度腹が立ったものだが、今日はなんだか大丈夫だ。この人はこんな人なんだと分かったから。

だから、翠咲は考えてみる。
んー……確かに翠咲は倉橋に向かって嫌いだと言ったけれど、倉橋からは『あなたが嫌いだ』と言われたことはない。

「言ってないですね。でも嫌いだから、態度が悪いんだって思いました。けど、それも私の誤解だって分かりましたし、お詫びもしましたよね」

そう!もう、謝ったのよ。
お詫びを受け入れてくれたのなら、もう、いいかなあ?

「本当に心から申し訳ないって思っています。あの、私帰ります」

話をしたいと言うから、来たのよね。
でももう、和解も……たぶん出来たと思うし、もういいだろう。……帰ろう。

翠咲はおそらくは、まだ酔っていた。
むしろ確実に。

だから、目の前に止まっていたタクシーにそのまま乗り込んで、自宅までの住所を告げたのだ。

ちなみに残された倉橋がどう思うかなんて、ほとんど全く考えていなかったのである。


< 50 / 231 >

この作品をシェア

pagetop