フォンダンショコラな恋人
4.お仕事しましょう
その数日後のことだ。
翠咲は上司に呼び出された。

打ち合わせで呼び出されることは、ままあることなので、さほど気にしてはいなかったのだが。

「宝条さん、弊社宛に訴状が届いている」
「え?」
訴状……?

「訴えられたってことだね」
上司である沢村課長は、割と動揺しておらず淡々とした感じだ。

むしろそんなことを聞いて、動揺したのは翠咲の方だった。
「そんな……あの、案件は……?」

沢村は顔を青ざめさせた翠咲を見て、安心させるように笑う。
「以前から報告を受けている件だからね。心配しなくて大丈夫。それに知っていると思うけど、査定の場合は契約者が訴えるっていうことは割とある」
「そうなんですけど……」

それでも人の案件ではそういうこともあると、聞いたり目にしたことはあるけれど、翠咲自身はそんな形になってしまったことはない。

「申し訳ありません。私が関わっていながら……」

それなりに実績は積んできたと思うけれど、まだまだ足りないことや知らないこと、把握していなかったことがあるんだと思うとため息をつきたくなる。
< 51 / 231 >

この作品をシェア

pagetop