フォンダンショコラな恋人
案件は手を離れる。
もう、直接案件に関わることはない。

けれど、清々したとも思えなかった。関わらせてもらえるのは確かにありがたい。翠咲の性格なら、気になってしまって仕方ないだろうから。

「宝条さん」
「はい」

「迷惑なんて思わなくていい。君は君の出来ることを全力でやった結果なのだし、僕はそれを認めています。それでも、なんともならない案件は存在するし、そのために僕や顧問弁護士なんてものが存在する」

「そうそう」
割って入ったバスボイスに、翠咲は顔を上げた。
確かに堂々たる体躯のスーツ姿の男性。
本当に180センチはありそうだ。

しっかり鍛えてそうながっしりした身体とにっと笑う口元が大きくて、まるで太陽かひまわりのような笑顔だ。

堂々とした感じでまた襟元に光る、弁護士バッチが逆らえない雰囲気を増幅させている。
にこにことしていて、頼りがいのある感じ。

この人が、渡真利先生……。
後ろには倉橋がいた。
太陽のような渡真利と比べるとその雰囲気はまるで月のようだ。
蒼白くひんやりとしていて、そのくせ人を魅了する。
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