フォンダンショコラな恋人
ふと、その倉橋と目が合った。
「先日は……すみませんでした」

悪口……のようなものを言ってしまったお詫びだ。
翠咲は軽く頭を下げる。

「いえ。こちらこそ」
みんなで課長が抑えていたミーティングルームに入る。

着席すると、課長が尋ねた。
「渡真利先生、訴状は?」
「ああ、見た見た! クッソくだらねーよな‼︎ 大きな声じゃ言えねーけど」
あはは!と笑っている。

えーと……むちゃくちゃ大きな声で言っているような気がするのですが。

渡真利はつい、じいっと見てしまっている翠咲を見返した。

そうしてにっと笑う。
「心配しなくていいからな。実際、倉橋で十分カタをつけられると思うからさ。こいつもこう見えて優秀な弁護士なんで」

「渡真利先生、こう見えて……は言い過ぎじゃないですか」
倉橋が、そう淡々と言い返すのを見て、だから、認めてるってー!と渡真利は笑っていた。

あ……もしかして、この前の吹いたら飛びそう、とか気にしているんだろうか?
あれはちょっと盛ったし、そこまでは今は思っていないし、こうして見たら渡真利ほどではないけれど頼り甲斐はありそうだし。
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