フォンダンショコラな恋人
「倉橋先生」
翠咲は倉橋に向き直った。
「よろしくお願いいたします」
そう言って頭を下げる。

「はい」
「倉橋、だから愛想ないんだってお前は。こんな可愛い人が頭下げてんのに、はいしか言わないお前のメンタルどうなってんだ? えーと、宝条さん任せてくださいね」

「渡真利先生、盛り上がっているところ恐縮なんですが、担当は僕にバトンタッチですので。ご存知ですよね? この、うちの可愛い宝条はもう担当じゃないですからね」
沢村がにっこり笑って、渡真利に言う。

「沢村課長、そうなんですね。つまんないなあ。では宝条さんがなぜこの場に?」

「この案件の担当者でもあるんですけど、宝条は主任という役付きでもあるんです。ちょっとキャリアを積ませてやりたいので、今回は僕の補佐(サブ)ということで入ってもらいます。まあ、あくまでも担当は僕なんですけどね」

沢村もにこにこしながら、迫力のある渡真利に呑まれることはない。
あくまで担当は自分なのだと言う。

「俺もセクハラで訴えられるようなことはしませんよ?」
「そんなこと言ってませんよ?」
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