フォンダンショコラな恋人
「よし!」
鏡に向かってにこっと笑って、お手洗いの外に出ると、廊下の壁に倉橋がもたれて立っていて、翠咲はギョッとする。

「……っ、く、倉橋先生」

「大丈夫か?」
「大丈夫ですよ!よくあることって、課長も言っていたし。あ、案件は私は外れて、これから課長が担当になるから安心ですね!」

「僕は君が担当から外れて良かったと思っている」
この人、どこまで人を落ち込ませたら……。

「ですよね! 私じゃ心配ですよね」
(だから、もう担当は課長になったって言ったじゃない)

「もう、私に関わらなくて済みますしね」
「そうじゃない」

倉橋の声が少し苛立たしげな気がして、翠咲はびくんとした。

「向こうがエスカレートしてきているのは、分かってた。何しでかすか分からないし、君にそんな危ないことに関わって欲しくなかった。まあ、こっちの土俵に乗ってくれたから良かったけれど……」

……なに言ってるの?この人?
関わって欲しくなかったって、何?
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