フォンダンショコラな恋人
「やっぱ、モテるんですね。もしかして、個人的に誘われたりしてたんですか?」
「え?なんで知って……」

「うわー、うちの女子とか中には肉食な人もいますから気をつけてくださいね」
「肉食……」

「先生なんて、食べられちゃいそう」
「だから、それなりに鍛えているから」
ムッとした倉橋が綺麗な指でシャツのカフスを外す。

肘の真ん中くらいまで軽く袖をまくった。
突然の行動に思わず、翠咲は目を瞠ってしまったのだった。

倉橋の細く、きゅっとしまった手首から腕の真ん中にかけてきれいに筋肉がうっすらとついているのが見える。
ぐっと握った手首の内側にはすうっと筋が浮き出ていて鍛えている、は本当のようだ。

「あら……」
「魚料理でございます」
とギャルソンがテーブルに皿を持ってきて、その話題は休題になった。

「全く、僕は何をしているんだか……」
倉橋が舌打ちしそうな勢いで袖を直す。
「素敵なお腕でしたよ?」
ギャルソンがにっこり笑った。

倉橋が珍しく気まずそうな顔をしている。
翠咲は遠慮なく笑ってやった。
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