フォンダンショコラな恋人
「お、おもしろっ……倉橋先生、おもしろすぎです。腕とかまくります? 普通? ごめんなさい。以前に言ったの、訂正しますから。吹けば飛ぶなんて思ってないです」

「事実ではありませんから。今、証拠も確認しましたよね」
「先生、スイッチ入ってます」
翠咲がくすくす笑っている顔を倉橋は見ていた。

「君は……なんでそうなんだ?」
「そう?」

「そうやって笑ったりするんだ? っていうことだ」
「おかしかったら笑いますよ」

「嫌いだと言ってみたり、そうでもなかったと言ってみたり頼りにしていると言ってみたり、怒ったり泣いたり、笑ったり……」

「普通だと思うんですけど」
それよりもむしろ、倉橋の方が感情が動かなさ過ぎなのだ。

けれど、動いていないように見えて実は結構気にしていたり、ムッとしたり、自分だって任せなさいとか言って笑ったりしているのにと翠咲は思う。

普通の会話に中で証拠とか言うか?

それに、倉橋の気まずそうな顔なんて初めて見た。

「普通……か。僕はこんなふうに感情が動くことは珍しいんだ。けれど、不思議だな。それが君に動かされていると思うと悪くはないよ」
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