フォンダンショコラな恋人
そしてその脚立に翠咲は足をかける。
「おいっ!」
くるりと視界が反転して、倉橋に腕を引かれてその胸の中に抱きこまれた。

「それ、ロックしないで登ったら危ないだろう?」
確かにキャスターのついた脚立にロックをしないで上がったら、危ない。

「……ご、ごめんなさい」
倉橋はぎゅっと翠咲を抱きしめる。

「せ……んせい……?」
「僕は後悔したことはない。」
「はあ……」

なんで抱きしめられたまま、そんな話を聞いているのか。
「けど、この前は後悔したんだ」

ん?この前……食事に行った時のことだろうか?
はっ!
そういえば、倉橋にご馳走になってしまった。

翠咲は出すと言ったのだが、倉橋が全然譲ってくれなくて。

「あの! ご飯のことなら……」
「ご飯? 君は何を言っている?」

はあ……と倉橋はため息をつきながらも、腕を緩めてくれる気配がない。
あの……微妙に居心地がいいんですけど。
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