フォンダンショコラな恋人
ましてや、今回のケースは最初から高額で契約しており、ほとんど貰うつもりで契約していると思われる若干悪質なケースだから、なおさらだ。

こういう場合は、ADRという紛争解決機関への申し出や、場合によっては『訴える!』と言われることもあるので、弁護士への相談は必須なのだ。

当然紛争や交渉に関しては、法的な解釈が必要なので早いうちからの弁護士への相談が必要で、保険会社にはそのための顧問弁護士もいる。

幸いなことに、翠咲は今まで異動してからは弁護士に相談するような案件はなかった。
その前に交渉で解決出来てしまうことが多かったからなのだが、今回はそうも言ってはいられない。

だから、翠咲は知らなかった。
その顧問弁護士がどんな人物か。

隣のチームの川崎主任は
「よく出来る人。感じいいよ。よく話を聞いてくれて、しっかりアドバイスしてくれるし」
安心して相談していい、と言われたのだ。

だから翠咲は安心して相談したのだ。
まさか、一刀両断されるとも思わずに。

翠咲は自席に戻って、分厚くなってしまった書類をデスクに置く。
深いため息をついた。
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