フォンダンショコラな恋人
「ええ。あの、ご飯のお金なら私、出すので……」
「違う。君の連絡先も聞いていなくて」
「あ……」
それは、実は翠咲も少し思ったのだ。

家についてからお礼を言おうと思って携帯を手にしたものの、倉橋の連絡先が分からなくて。

「そうですよね。私もお礼も言わずに申し訳ないな……って」
「じゃあ、お礼して」

「あ、ご馳走さまでした」
「違う。なんでキスなんかしたと思うんだ?」

「えー……」
そう言えば、なんでだろう?

「事故……とか?」
「したかったからしたんだ」
なんだかそのセリフ、前にも聞いたような……。

「僕は理由のないことはしない」
それにはとっても納得だ。この人は絶対に意味のないことなんてしない。
「なんか、分かる気がします」
「お礼して?」

うーん、どうやらご馳走様でしたと言うだけではダメのようだ。

「そうだな……。君の時間を僕にくれるか?」
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