フォンダンショコラな恋人
先程からいくつかの書類の山を確認して何となく分かっていた事だが、そう言われるとなおさらに納得したし、笑ってしまう。

「なんだ?」
「っふ……だって先生、書類確認するのも綺麗に時系列順なんですもん。こんな、几帳面に書類を見る人はうちでもなかなかいないですよ」

「……それ、こっちに持ってきてくれるか?」
「はい」

そう言えばいつも淡々と敬語だったのに、いつの間にか倉橋はタメ口になっていた。
翠咲が持ってきた書類を倉橋は綺麗に整理しながら、キャビネットに入れてゆく。

「作業してくれる事務員さんとかいるんじゃないですか?」
「いるんだが、渡真利先生がちょっと忙しくて、そっちにかかりきりになっているんだ。まあ、片付けだしな」
「そうなんですね」
翠咲は次の山に着手し、それも整理して倉橋のところに持ってゆく。

ふと、手が重なった。
「あ、ごめんなさ……」
翠咲はどかそうとしたのだが、きゅっとその手が握られる。

倉橋はひどく真剣な顔をしていた。
「あ……の? 倉橋先生?」
「君はなぜ食事に誘ったのか聞いたよな」

え?その回答今⁉︎
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