フォンダンショコラな恋人
「なあ? なんで、そんなに可愛い顔で俯いてる?」
かっ、可愛い⁉︎
どこの誰が⁉︎誰に……っ。

「可愛くは……ないと……」
倉橋の手が翠咲の手を離れる。

翠咲は俯いたまま、それを見ていた。
この前もレストランで見た倉橋の手元。
すらりとした指が綺麗で、指を動かすと手の甲にすうっと筋が出るのが目に入る。

倉橋先生って、手も綺麗なのね…。
その手が、そっと翠咲の頬を撫でた。

「どうして今も逃げないんだ?」
逃げたい!けど……逃げたくない。
どうして?どうしてなんだろう……?

嫌いだって思ってた。
けど、割と悪くない人かもしれないって思って。そうだ、必ず翠咲を守ると言ってくれたのだ。

そしてそれを実行した。
それで、食事に行って。結構楽しくて……で、今日、キスされて。

近づく倉橋の顔を翠咲は見ていた。
ふわり、と重なる唇。

倉橋の唇の感触は翠咲は嫌じゃない。何度も優しく触れてくれるのも。

最初は唇が重なるだけのキスのはずだったのに、いつの間にかしっかり倉橋に抱きしめられていてその胸の中にいた。
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