フォンダンショコラな恋人
7.勝ちを掴みにいく男
そして時間は少しだけ戻る。
あの翠咲がホテルの前からタクシーで帰ってしまった直後の頃のことだ。

ピピピ……という目覚ましの音をしばらく聞いて、倉橋はアラームを止めた。
ベッドに寝転がったまま枕元のスマホに手を伸ばして、今日の予定を確認する。

──今日は特に面談とかの予定は入っていないな。

倉橋は寝起きがあまり良くなくて、完全に目を覚ますまでそんな感じで十分(じゅっぷん)ほどをベッドの上で過ごすのだ。

かと言って、その時間をぼうっと過ごすことは時間の無駄だと倉橋は思うので、今日の予定や、やることを頭の中で組み立てる時間に充てることにしている。

いくつかの事案を同時にこなしつつ、案件によっては直接の打ち合わせを必要とする。
時間も効率も考えて行動しないと、全ての予定をこなすことはできない。

こうして予定を立てていても、その合間合間に新規の案件が入ってくることもあるのだ。

大体の予定を組んで、その頃には頭もハッキリしてくる。
それからおもむろに起き出して、シャワーを浴びに行くのである。

電車が混み合う前に事務所に向かうのが、倉橋の日常だった。
< 88 / 231 >

この作品をシェア

pagetop