フォンダンショコラな恋人
もう顧問弁護士である、倉橋陽平とのやり取りは2回目で、1回目は鼻で笑われんばかりの対応だった。
2回目の今日も、結局のところ証拠が足りない、である。
翠咲の仕事はこの案件だけではない。
社員からの相談にも乗って、アドバイスしなくてはいけないし、自分のチームの進捗も確認しなくてはいけない。
パソコンに向かって、上がってきた書類を確認しながら、一瞬動きが止まる。
──もう、払ってしまおうかな……。
そうしたらこんな案件いつまでも抱えなくて済むのだし、あの超絶に感じの悪い弁護士と話をしなくて済む。
逃げた方が楽。
そんなことは分かっている。
けれど……翠咲には無理だった。
あの時、あの放火事件の時、仏が翠咲に言ったのだ。
表彰が決まった時、翠咲は絶対に嫌だと泣いた。
自分の手柄ではない。むしろ、自分は誤った選択をしようとした。
それを水際で止めてくれたのは、上司なのに……。
2回目の今日も、結局のところ証拠が足りない、である。
翠咲の仕事はこの案件だけではない。
社員からの相談にも乗って、アドバイスしなくてはいけないし、自分のチームの進捗も確認しなくてはいけない。
パソコンに向かって、上がってきた書類を確認しながら、一瞬動きが止まる。
──もう、払ってしまおうかな……。
そうしたらこんな案件いつまでも抱えなくて済むのだし、あの超絶に感じの悪い弁護士と話をしなくて済む。
逃げた方が楽。
そんなことは分かっている。
けれど……翠咲には無理だった。
あの時、あの放火事件の時、仏が翠咲に言ったのだ。
表彰が決まった時、翠咲は絶対に嫌だと泣いた。
自分の手柄ではない。むしろ、自分は誤った選択をしようとした。
それを水際で止めてくれたのは、上司なのに……。