フォンダンショコラな恋人
3ヶ月の治療期間の支払いは他社と合わせると、200万近くにものぼる。
通院するだけで、だ。
どう考えても、貰う気で最初から搾取する予定で契約をしたとしか思えないのだ。

しかし、それと訴訟とはまた別なのである。

それを詐欺まがいの偽造事故なのだと言い切るまでには、病院での検査の結果など必要な情報を集めなくては話にならない。

それも通りいっぺんのものではなく、詳細な検査結果だ。

本人はのらりくらりと漫然と通院を繰り返しているものの、こちらの検査の依頼には応じていない状態だ。

詐欺まがいのことをする相手の恫喝や、しつこい電話に必死で対応している宝条を思うと何とかできないだろうかとは感じていた。

それにあの時の、割烹料理屋でも『疑義があるのに、折れるのは絶対イヤ!』と言っていた宝条の真っ直ぐさだ。

いくら顧問弁護士でも、なんとかしてやりたいと思ったとしても、倉橋は宝条とは別の会社の人間で、直接守ってやることはできない。

もどかしさを抱えていた。
その中で、今回の訴訟は起こったのだ。
ふ……と倉橋の口元に笑みが浮かぶ。
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