フォンダンショコラな恋人
──こっちの土俵に乗ってくるか?なら手加減はしないけどな。

そうして、倉橋はふと宝条の心情に思いを馳せる。
あの、真面目な彼女が訴訟なんて起こされて、傷ついてはいないだろうか……と。


14時の約束で先方に行くと、ミーティングスペースからは宝条の沈んだ声が聞こえて、渡真利はそれを笑い飛ばす。

「クッソくだらねーよな!! 大きな声じゃ言えねーけど」

十分大きい声だと思う。
あなたは地声が大きいんだ。

ため息をついて倉橋が宝条を見ると、彼女はじいっと渡真利を見ていた。
落ち込んでいるのか、普段よりも頼りなげな儚げなその雰囲気には、つい目が引き寄せられてしまった。

渡真利も彼女の不安げな視線に気づいて、笑顔になる。
「心配しなくていいからな。実際、倉橋で十分カタをつけられると思うからさ。こいつも、こう見えて優秀な弁護士なんで」

こう見えて……って、他人を頼りないみたいに。
実際、法廷では弱かったためしはないのだが。

それが気に入ってスカウトしたのだろうが!

「渡真利先生、こう見えて……は言い過ぎじゃないですか」
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