フォンダンショコラな恋人
「だから、認めてるってー!」

明るく笑う渡真利は、この人にお願いすれば怖いことなんてない、と思わせるところがあって、そういうところが倉橋とは違う。
最初から懐に入ることができるのが渡真利で、倉橋は徐々に信頼を得ていくタイプだ。

その場に、宝条の静かな声が響いた。
「倉橋先生」
宝条が真っ直ぐ倉橋を見ていた

綺麗な茶色の瞳。柔らかそうな髪が肩の辺りで揺れている。華奢な肩だ。

「よろしくお願いいたします」
さらりと髪が揺れて、宝条は頭を下げた。

絶対に、負けない。
その小さな頭を見て、倉橋は固く誓う。
「はい」

「倉橋、だから愛想ないんだって、お前は」
笑いを含んだ渡真利の声に、倉橋は声の主をじろっと見やる。

──愛想より、実力でしょうが。

さらに、気づくと渡真利は担当は課長である沢村だとけん制されており、どこまでもふざけた人だと倉橋は思う。
ふざけていてさえ、敵に回したくはないのは間違いはないけれど。

「この案件の担当でもあるんですけど、宝条は主任という役付きでもあるんです。ちょっとキャリアを積ませてやりたいので、今回は僕の補佐(サブ)ということで入ってもらいます。まあ、あくまでも担当は僕、なんですけどね」
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