フォンダンショコラな恋人
「大丈夫ですよ! よくあることって課長も言っていたし。あ、案件は私は外れて、これから課長が担当になるから安心ですね!」

よし!と言って自分を元気づけてはいたものの、まだ空元気なのが倉橋にはありありと分かった。

「僕は君が担当から外れて良かったと思っている」
倉橋の口から出た、 それは本音だ。
宝条が悪くもないのに、訳の分からない奴から言葉を荒げられた罵られたりすることなど耐えられない。

「ですよね! 私じゃ心配ですよね。もう、私に関わらなくて済みますしね」

違う。
そんな風に思っている訳ではない。

もう宝条に関わりたくないとか、そういうことではなく、これからは自分が守れるとそう思ったのに。

「そうじゃない」
つい低く漏れてしまった声に、宝条がびくっとするのが分かった。

彼女はきっとまだ気持ちが不安なのだろうに、これはいけない。

言葉が少ないままでは、誤解をさせてしまうのだと分かる。
知っていたけれど、宝条には誤解されたくないと思ったのだ。
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