フォンダンショコラな恋人
「向こうがエスカレートしてきているのは分かってた。何しでかすか分からないし、君にそんな危ないことに関わって欲しくなかった。まあ、こっちの土俵に乗ってくれたから、良かったけれど……」
宝条はきょとん、としている。

くりっとした瞳できょとんと倉橋を見てくるのは、とてつもなく可愛いんだが!

「これで今回の君の立場はあくまでサブなんだから表には出ないように。案件は法廷に持ち込まれた。ここからは僕らの出番だ。君はもう……頑張らなくていい」

「頑張らなくて……いい?」
言い方がまずいかもしれないと思い、倉橋は慌てて言い直した。

「ああ。あー、変な風に思うなよ。もう充分頑張ったって話だし、僕はそれを見てきた。それでも手を出すことは出来なかった。けど今からは違う。僕が頑張る番だと言っているんだ」

正直、倉橋はここまで自分の気持ちを伝えるために努力したことはない。

全く……彼女が鈍いのか、僕の伝え方が悪いのか。両方か……。
それでも、倉橋の努力は無駄ではなかったようだった。

倉橋が好意で守りたかった……というところまでは気づいていなくとも、悪い感情ではないということは分かってくれたようだった。

ふわと表情が緩んで、くすっ、と可愛らしい笑い声が聞こえたから。
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