【短】お前が誰のものか分からせてやるよ。
「失礼致します。お冷をお注ぎしましょうか?」
「あ、お願いしま……」
店員さんが私達のテーブルに声を掛ける。低い男の人声だった。
ん?どこかで聞いたことのある声のような気がする。
顔を向けてみれば、そこに立っていたのは黒いベストとエプロンに、白いシャツの襟元を蝶ネクタイで留めたウエイター姿の男性。
目の前の、ブラウンのマッシュにサイドを刈り上げた美男子に見覚えがある。
この人は、もしかして……思わず見つめたまま固まっている私を見て、彼は形の良い薄い唇の端を上げた。
「久しぶりだな、3年ぶりか」
「……る、瑠衣《るい》!?」
懐かしい名前を、裏返った声で叫びながら立ち上がる。
すると、同じテーブルに居る友達が「え、何?」とビックリしていて、周りの人達も何事かとこっちを見ていた。
うわ、恥ずかしい!
「ご、ごめんなさい!なんでもないです!」