(仮)愛人契約はじめました
雪村さんは、会社の皆さんにヤンバルクイナとか呼ばれていたのか。
……希少な生物だからかな。
そう思いながら、唯由はエレベーターの中から急いでメッセージを送った。
そういえば、蓮太郎を褒めてないままだと気づいたからだ。
「すみません。
いつもなんだかんだでお褒めいただいていたのに、私、雪村さんを褒めないままで。
思いついたら、すぐ送りますね」
しばらく仕事をして、スマホを見ると、
「いや、別にいい。
俺にいいところなんて、きっとない」
というメッセージが入っていた。
……珍しく謙虚だな、と唯由は思ったが、蓮太郎は落ち込んでいるだけだった。
「そんなことないです。
ありすぎて、答えられなかったくらいですから」
そう送ると、そのまま返事はなかった。
なんだろう。
なにか怒っているのかな、と思いはしたのだが。
忙しかったので、そのあとはもうスマホを見ることはできなかった。