(仮)愛人契約はじめました
 やはり、親戚なのか。

 同族経営だって言ってたもんな、と唯由が思ったとき、

「俺の愛人を迎えに来たんだ」
と蓮太郎が言った。

「愛人?」

 そう、と蓮太郎は唯由の肩を抱き寄せかけて、何故か手を離し、少し距離を置くと、唯由を手で示した。

「愛人だ。
 じいさんにもよく言っておいてくれ」

「……ずいぶん、よそよそしい愛人だな」

 社長はそう言ったあとで、唯由に深々頭を下げてきた。

「入社早々、蓮太郎が迷惑をかけているようで」

「いっ、いえっ、そんなっ。
 とんでもないですっ」
と唯由もペコペコ頭を下げる。

 離れたトイレから出てきた美菜が蓮太郎に気づき、
「うわっ、同期なのに久しぶりに見た~」
と呟くのが聞こえてきた。


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