(仮)愛人契約はじめました
「それはよかったですね」
と直哉が微笑んだとき、その後ろから若い可愛らしいメイドが手を振った。

「唯由様~っ」

 以前、蓮形寺家で働いていたメイド、早蕨友希(さわらび ゆき)だ。

 継母によって使用人たちが辞めさせられたとき、唯由はみんなを親族の家に割り振ったが。

 友希は、
「友だちと同じお屋敷で働けることになったので、私は大丈夫です」
と言って辞めていったのだ。

 唯由に負担をかけないよう、自分で就職口を探してくれたようだった。

 そうか。
 ここだったのか、と唯由は駆け寄り、再会を喜ぶ。

「唯由様っ。
 お会いできて嬉しいですっ」

 二人で抱き合い、ひとしきり騒いだが、唯由から離れた友希が真顔になって言ってくる。

「……それはそうと、何故、通勤スーツで来られましたか。
 雪村家にご挨拶に来られたのでは?」

 ええ。
 愛人としてのお披露目で……と唯由が思ったとき、蓮太郎が後ろから言ってきた。

「大丈夫だ。
 蓮形寺はなにを着ても愛らしい」
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