(仮)愛人契約はじめました
 だが、蓮太郎に睨まれても直哉はその整った顔を乱すことなく平然と言ってくる。

「蓮形寺だと月子様と混乱するからです」

「……月子は関係ないだろう。
 見合いは断った」

 だが、ははは、と直哉は笑って言う。

「止まりますかねえ、見合い。
 一族の意思の前では、蓮太郎様の意思などチリに等しいですよ」

 どんな執事だ……と思ったが、まあ、そうだろうな、と同じような家で育ってきた唯由は理解する。

「唯由様が一時的にでもおうちに戻られたらよろしいんですよ。

 月子様でも、唯由様でも。
 お見合いされるのはどちらでも良さそうでしたよ」

 ……それはそうなのかもしれないが、と思いながら、唯由はチラと蓮太郎を見上げる。

 雪村さんが欲しがってたのは、スキャンダルを巻き起こしてくれる愛人。

 見合い相手なんて健全な女になったら、私は用無しなのでは……?

「やかましい。
 唯由は愛人だ。

 それ以外の何者でもない」

 蓮太郎は直哉にそう言い捨てて、さっさと階段を上がっていく。

 友希が、

 う~ん。
 この王子、イケメンだけど、微妙な人ですよね~……という顔で、唯由を見た。



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