(仮)愛人契約はじめました
「いや、付き合ってはいない」

 蓮太郎は真伸に向かい言い切った。

「こいつはドロ沼な愛人だ」

 どうドロ沼!?

 まあ、月子と見合いして結婚したら、リアルドロ沼かもですが。

 私は所詮、雇われただけの偽の愛人ですしね、と唯由は思っていた。

 だが、真伸は何故か、
「ほうほう。
 ドロ沼な愛人か。

 それは情熱的でいいことだな」
と機嫌がいい。

「いや、めでたい。
 こんな礼儀正しくて美しい蓮形寺のお嬢さんと。

 いい組み合わせだ。
 大王、酒を持て」

 いつの間にか障子の向こうに控えていた、この屋敷に不似合いな執事に真伸は声をかける。

 はい、と英国貴族に仕えていそうな白髪で品のいい執事が頭を下げた。

 大王直哉とよく似ている。

 直哉の父親である執事長のようだった。
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