(仮)愛人契約はじめました
 蓮太郎は沈黙して、唯由の顔を見つめたあと、
「みんな帰ったから、俺も帰るよ」
と言ってきた。

「あ、そ、そうですか。
 わかりました。

 そういえば、駐車場、月子がとめてましたよね?」

 ああ、と蓮太郎は窓の外を見る。

「だから、いつものコインパーキングに入れてきた」
「そうなんですか、すみません」

 駐車場まで送っていきましょうか、と唯由が言うと、いやいい、と言いかけた蓮太郎だったが、

「……そうだな。
 送ってもらおうか」
と言う。

「俺がそのあと、此処までお前を送ってやるから」

 いやだから、それ、面倒臭くないですか? と思っていたのだが。

 実際に唯由の口から出た言葉は、
「……はい」
だった。

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