(仮)愛人契約はじめました
一度、車を駐車場から出し、物陰にとめた月子たちは二人の様子をうかがっていた。
「あの男は莫迦ですのっ?
せっかくお姉様と二人きりにして差し上げましたのに。
何故、すぐに出て来るんですのっ?」
しばらくすると、蓮太郎が車に唯由を乗せて戻ってくる。
唯由が中に入るのを見届け、蓮太郎は帰っていった。
「わざわざ送ってもらって、また送ってくるとか。
なんで、あんな面倒臭いことをするのかしら?」
「あれが恋というものよ、月子」
なんだかんだで一緒にいたいのよ、と早月は言う。
「今の状況をあんたとあんたの好きな人に置きかえてごらんなさいよ」
月子はしばらく黙り、妄想にふけったあとで、
「ときめきますわっ」
と叫んだ。
「そう。
よかったわ。
月子。
私、朝、早いからついでに送ってね」
助手席から早月に言われた月子は、
「わかりましたわっ。
お姉様のお母様っ」
と発進したが、すぐに早月に叫ばれる。