(仮)愛人契約はじめました
唯由はジャクジーと繋がっている一番広い部屋の中を見回し言う。
「素晴らしいお掃除ですよね。
調度品の陰にもチリ一つない」
「チェックしたのか。
姑か」
……いやいや。
あまりにも掃除が行き届いていたので、感心して、つい……と唯由は苦笑いする。
「そういえば、いつも思うんですけど。
ああいう和室とか、素敵だけど、なにをしたらいいのかなって」
和風モダンな調度品と素敵な陶器の照明器具が床の間や黒檀の机の上にある和室。
……なにをしたらいいのだろうな?
灯りをつけて瞑想にふけるとか?
ずっと灯りをつけておいたら、この部屋から和室を眺めたときに綺麗かなとは思うのだが。
一人暮らしをはじめてから電気を切って歩く癖がついてしまったので、つけっぱなしはなんだか落ち着かない。
「あとで、あそこで二人で酒でも呑めばいいじゃないか」
「あ、そうですね」
そうか。
大人数で来たときには思いつかなかったけど。
こうして、二人で旅行に来たときは、静かにあそこでお酒でも呑めばいいのか……。
そう思ったとき、蓮太郎は唯由のカメラを手に、いつもリラクゼーションルームで座っているようなリクライニングチェアに腰を下ろした。
昼間撮った写真をチェックしている。