(仮)愛人契約はじめました
 蓮太郎は唯由の車から唯由を引き抜いた。

 自分の横にのせる。

「……ゲーム終わっちゃいますよ」

 そうだな、と蓮太郎は二人の乗ったその車を見ながら呟いた。

「王様ゲームはもう終わりだ」

 いつかの夢と同じことを蓮太郎が言ったので、ドキリとする。

 もういりませんか?

 もう愛人いりませんか?

 もう愛人としてお側にいることもできませんか?

 あなたが好きだと気がついたばかりなんですけど。

 もう私、いりませんか……?

 だが、蓮太郎はその車のコマを見つめたまま言う。

「俺は自分の野望のために、お前を愛人にしたかった。
 ひいじいさんの逆鱗に触れて、後継者候補から外れたかった。

 だが、お前は、ひいじいさんに気に入られてしまった。
 その時点で、お前は用なしのはずだった」

 あの……、心臓が止まりそうな言葉のチョイスやめてください、と思う唯由の前で、蓮太郎は車に乗った二人だけを見つめている。
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