辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する
プロローグ
■ プロローグ

 サリーシャは美しく剪定された植木の陰で、こっそりと隠れて花冠を編んでいた。周りから死角になるこの場所は、サリーシャと大切な友人の秘密の待ち合わせの場所だ。シロツメクサの混じる芝生の上に座っていると植木の隙間から心地よい風が頬を撫でた。
 サリーシャは集めたシロツメクサを並べると、一番長く太い茎の一本を芯にして、丁寧にまわりに別の花を巻き付け始めた。最初はただのバラバラの切り花だったそれは、徐々に形を露わにしてゆく。

「上手に出来たわ」

 サリーシャはそれを見て満足げに微笑む。
 シロツメクサで作る花冠作りは、小さな時に本当のお母様に教えてもらった。畑の傍らに咲いた花を集めては花冠を作り、近所の子供達とお姫様ごっこをして遊んだものだ。

「フィル、遅いなあ……」

 サリーシャは少しだけ背伸びして、高い植木の上から辺りを見回そうとした。しかし、植木の背はサリーシャよりも高く、見渡すことは叶わなかった。と、その時、後ろからカサリと音がして、サリーシャはパッと振り返った。

< 1 / 354 >

この作品をシェア

pagetop