辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する

「馬は軍人にとって相棒だ。生死を分ける危険の中を共に戦う。馬丁(ばてい)はもちろんいるのだが、デオの世話は基本的に俺がしている」

 そう言うと、セシリオは愛おし気にデオの首を撫でた。よく慣れているようで、デオは嫌がることもなく大人しくしている。

「触ってみるか?」
「いいのですか?」
「きみなら、構わない」

 セシリオに微笑まれ、サリーシャの胸はトクンと跳ねた。その言葉は、自分は特別な存在だと言われているような気がした。自惚れてもいいだろうか? そんなことが脳裏に掠める。
 そろそろと手を伸ばすと、デオはサリーシャの手の方向に鼻を向けた。サリーシャはビクンと手を引く。

「怖がらないで。ほら」

 引っ込みそうになったサリーシャの手にセシリオの手が覆い被さるように重なり、そのままデオの首元に触れた。手のひらに、少し固い毛並みの感触と、その奥から伝わる熱を感じた。
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